鍼灸院 氣楽

 
 

東洋医学とは

西洋に対し東洋と言うと中国の他、インドなどアジア全体が含まれますが、
ここでは中国を中心に発達した医学を指すようにします。

 

東洋医学の世界観

東洋医学は気を基に考えられてます。
気は自然界に満ちあふれており、季節や時間と共に勢退し、
人の生命活動に欠かすことができない物でもあります。

自然界にある暑さ、寒さ等の特徴的な働きを「気」と言い、
あらゆる生命活動が影響を受ける「気の思想」がよりどころになっています。

また、天と地からなる宇宙(大宇宙)と人は形・機能が似ているので、
人も一つの宇宙(小宇宙)であるという「天人合一思想」があります。

「気の思想」と「天人合一思想」から自然界に気が満ちているのと同じように、
人にも気が満ちていると考えられます。

東洋医学では宇宙の生成から生命現象に至るまですべて「気」を根底に理解し、解釈しています。

その他、天の陽気と地の陰気が調和し人の気が生成されるという「天地人三才思想」などもあります。

 

陰陽論

陰陽論は色々な物象を陰と陽の二極に分けて考えます。
陰、陽は互いに影響を及ぼしながら変化します。

積極的に動く物、外向的、上昇的、温熱的、明瞭な物などはに属します。
相対的に静止した物、内向的、下降的、寒冷的、暗い物などはに属します。

陰と陽は互いに対立していますが同時に依存もしています。
どちらかが大きくなればもう片方は小さくなります、
しかしお互いがいなくては存在できないので無くなる事はありません。

この様に陰陽は対立・依存しながら常に勢退を繰り返しながら平衡をたもっています。

また、一定の条件のもとでは反対の性質に転化する事がある、という性質もあります。
条件には、重大になる、極まる、など大きく偏るった時に起こります。
例えば熱でうなされていた人が急に寒がるなど、反対の物に化ける事があります。

 

五行学説

五行とは木、火、土、金、水の五種類の物質です。

五行学説では「似たものは似たように働く」という法則があります。
色々な物事がその性質が似た五行へ分類されました。

木の特性
樹木が上に伸びていく様子から・生長・昇発・のびのびした姿、等
の作用や性質を備えている物事を「木」に当てはめます。

火の特性
炎上している火の温熱、上昇する様子から・温熱・上昇、等
の作用や性質を備えている物事を「火」に当てはめます。

土の特性
畑での農作物への作用から、・生化・継承・受納、等
の作用や性質を備えている物事を「土」に当てはめます。

金の特性
金属は加工の様子から・精潔・粛降・収斂、等
の作用や性質を備えている物事を「金」に当てはめます。

水の特性
水の潤し、低い所へ流れる様子から・寒涼・滋潤・下へ物を運ぶ作用、等
の作用や性質を備えている物事を「水」に当てはめます。


五行の相生関係(母子関係)
相生関係とは相手を生ずる(育成する、保護する、援助する 等)働きです。
相手は決まっており 木生火、火生土、土生金、金生水、水生木です。
木を燃やせば火がでる。火が燃えて灰になり土になる。
土中から金属が産出する。金属に朝露が付く。水は木を育てる。
という所から来ているようです。

相生

五行の相克関係
相克関係とは相手を克する(勝、抑える、支配する 等)働きです。
相手は決まっており 木克土、土克水、水克火、火克金、金克木です。
木は土に根を張る。土嚢で水の流れを変えたり、土で埋め立てる。
火は水で消える。金属は熱で溶ける。木は鉄の斧で切る。
という所から来ているようです。

相克
 

人体の仕組み

人体の仕組みは大きく分けて、気の類形の類経絡の類に別れます。
気の類
生体の活力として働くもので、があり三宝と呼びます。

形の類
身体の構造を形作るもので、体内の各器官や組織を指します。

経絡の類
気血の通路のことで、臓腑や頭、体感、四肢、体表部と連絡している。



精には先天の精と後天の精があり広義には血や津液も含まれます。
先天の精
先天の精とは両親から受け継いだ精のことで、五臓の腎にしまわれています。
人体の諸器官、組織を構成しこれらを生長させていく素となるものです。

後天の精
後天の精とは、飲食物より得られる精のことで、脾胃でつくられます。
先天の精を補給し、人体で活動する営気、衛気、宗気、津液、血の素となります。

精が盛んであれば生命力は旺盛で、臓腑・筋骨も丈夫で気力も充実します。
精が不足すると生命力は弱まり、全身の臓腑・器官も虚弱となり、筋骨も脆くなります。
その結果、体温の低下、冷え、疾病にかかりやすい、老化が早まるなどの影響が出ます。

精を充実させるには、腎を補う、神気の不安定などの障害を除く、
そして適度な運動・食事をし正しい呼吸法をする事が大事です。



血とは、脈中を流れる赤色の液体を指します。
血の源は飲食物です、血の素材は津液と営気で生成には肺による呼吸作用が関与しています。
血は営気と共に脈中を流れ、四肢や臓腑を潤し、その働きを支えます。
活動時は脈中を流れ全身をめぐり、夜臨床時に肝に戻ります。

血は心、肝、脾と関係が深く
は脈を介して血を全身に送り出し。
は活動する器官、部位に応じて血量を調節し。
は血の生成に関与し、また、営気を介して血が脈外に漏れないようにしています。

津液
津液とは、津と液のことであり、体内の水分を総称した物です。
津液の源は飲食物です、これらが胃や腸で水様のものが分離されて作られた物が津液である。

津とは陽性の水分をいい、清んで粘りけが無く、主として体表部を潤し、体温調整に関与する。
また、尿や汗となって体外に排出される。

液とは陰性の水分をいい、粘りけがあり、体内をゆっくり流れている。
骨や髄を潤し、体表部では目、鼻、口などの粘膜や皮膚に潤いを与える。

津液は脾胃(中焦)、肺(上焦)、陣膀胱(下焦)と関係が深い。
脾胃は、水穀から津液を分離し、脾の働きによって肺に送られる。
肺は、胃から送られた津液を全身に分散する。
陣は、全身に輸布された津液を管理し、不要なものを膀胱に貯めて尿として排出する。



気は活力があり、休むことなく活動する精微な物質です。

気の働きには、全ての臓腑、器官、組織の新陳代謝などを推し進める推動作用
体熱を産生、保持する温煦作用
生体を守る防御作用などがあります。

・原気
両親から受け継いだ先天の精が変化生成した物で、生命活動の原動力となるものです。
おへその下(丹田)にあつまり経絡を通して全身を巡り臓腑、器官、組織に活力を与えます。

・宗気
胸中にあつまる気のことで、心と肺に関係が深く、心の拍動を規則正しく、力強く行わせ、
呼吸や発生をしっかりさせるます。

・営気(栄気)
飲食によって得られる陰性の気で、津液を血に変化させ、血と共に脈中を行き、
一日に人体を50回巡り諸器官を栄養します。

・衛気
飲食によって得られる陽性の気で、脈外を素早く巡り肌膚を温め、張りをだし、
外からの悪い気に対し防衛的な役割をします。昼間に人体の体表部を25周し夜間に体内部を25周します。




神(神気)は五臓の中にあり、生命活動を支配・統制している気で神・魂・魄・意・志などがあります。


五臓の中の心にあり、神気のなかで最上位にあります。
心拍動や呼吸を適切に行わせ、視る聞くなどの知覚活動。
思考・判断などの精神活動、運動、表情、しゃべる等を正しく行わせます。


五臓の中の肝にあり、陽性で飛騰しやすい。
神の支配が薄れた時に夢や非合理な空想、幻覚、幻想が生まれるのは魂も働きです。
魂が衰えると自己の信頼感が薄れ自信がなくなる。
魂が傷つけられると現実と非現実の識別ができなくなり、人格の崩壊が生じます。


五臓の中の肺にあり、陰性で沈殿しやすい。
乳児の呼吸活動などの本能的行為や、風習化した日常行動を起こさせたり、
痛みやかゆみの感覚をもたらしたり、注意・集中させたりする。
魄が衰えると気魄が不足し、注意力が散漫となり、物覚えが悪くなり皮膚感覚が鈍くなる。
魄が傷つけられると狂気となり、他人を気にかけず勝手な振る舞いをしたり、
日常的な言語や動作を忘れたり、誤ったりする。


五臓の中の脾にあります。
単純な記憶や、思考を含んだ心を指します。
意が傷つけられると「おもい」に苦しみ心が落ち着かなくなります。


五臓の中の腎にあります。
目的を持って思ったり、思いを持続させる心です。
志が傷つけられると記憶の混濁や忘却が生ずる。

思、慮、智
思、慮、智の三者は意、志と共に知的な思惟過程と関係する神気であり、神の統制下にある
思とは、物事を工夫し、考える心です。
慮先のことを思いめぐらし、深く考える心です。
智とは、熟慮した上で最善の判断を下す心です。


臓腑

臓腑とは 五臓 肝・心(+心包)・脾・肺・腎 六腑 胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦 及び奇恒の腑 骨・髄・脳・脈・胆・女子胞 のことです。

五臓は精気を中に蔵している実質器官(中に物が詰まっている)です。

六腑は中空器官(中が空っぽ)で飲食物を消化、吸収、配布、排泄しています。

奇恒の腑は形は腑に似ているが性質や働きは臟に似ているものです。

奇恒の腑は形は腑に似ているが性質や働きは臟に似ているものです。

※胆は腑でありながら奇恒の腑にも属します。

臓腑間の関係

臓腑はある臟と、一つの腑にの間には表裏の関係があり、一対となって五行の一行に属しています。

五行
臟(裏)心・心包
腑(表)膀胱・三焦大腸膀胱

心の働き

心を蔵し、五臓六腑を統括します。

血脈を主ります。

心の状態は顔面の色つやに反映します。

心は舌につながっています。

心に対応する液は汗です。

心包の働き

心包は心を包んで保護します。

肝の働き

魂を蔵し、判断力や計画性などの精神活動を支配します。

血液を貯蔵し、就寝中は血は肝に血が環流し、日中は必要に応じて身体各部の血液量を調整します。

肝は筋の運動を主ります。

肝の状態は爪の色つやに反映します。

肝は目につながっています。

肝に対応する液は涙です。

脾の働き

営を蔵し、胃と一緒に消化吸収を司どり後天の精、津液を取り出し肺に送ります。

脾は皮肉の状態を主ります。

脾の状態は唇の色つやに反映します。

脾は口につながっています。

脾に対応する液は涎です。

肺の働き

肺は呼吸を通じて自然界の陽気を取り入れ これを主ります。

肺は衛気、津液を巡らすことにより皮毛に潤いを与え養います。

肺の状態は皮毛の状態に反映します。

肺は鼻につながっています。

肺に対応する液はてい涕です。

腎の働き

腎は精を蔵し、生命力の根源である原気をもたらします。

腎は津液を主り、水分代謝を調節します。

腎は骨を主り、状態は髪に反映されます。

腎は耳と二陰につながっています。

腎に対応する液は唾です。

胆の働き

胆は決断や勇気を主ります。

胆は精汁を蔵し、脾胃の消化機能を助けます。

胆は他の腑のように飲食物の運搬、伝化、排泄に直接関与していないので奇恒の腑の一つともなっています。

胃の働き

胃は脾と共に飲食物を消化吸収します。

小腸の働き

小腸は胃から送られてきた糟粕(飲食物のかす)を水分と固形分に分けます。

大腸の働き

大腸は小腸から送られてきた糟粕を転送しながら変化させ、糞便として肛門から排出します。

膀胱の働き

膀胱は体内に取り入れられた水分は全身を巡った後、膀胱に集められやがて尿となって排出されます。

三焦の働き

三焦は特定の器官を指すのではなく、飲食物を消化吸収し、得られた気血津液を全身に配布し、水分代謝を円滑に行わせる一連の機能の事です。

上焦、中焦、下焦の三つを合わせて三焦と言います。

上焦は横隔膜より上の機能を指し、飲食物から得た陽性の衛気を全身に巡らせます。臓腑では心肺と関係が深いです。

中焦は横隔膜から臍までの機能を指し、飲食物を消化し生じた営気と血を全身に巡らせます。臓腑では脾胃と関係が深いです。

下焦は臍より下の機能を指し糟粕に含まれる不要な水分を分離して膀胱にしみこませます。臓腑では腎、膀胱、大腸、小腸と関係が深いです。










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